はじめに
廃棄物処理法では、廃棄物の種類ごとに異なる規制体系が設けられています。
廃棄物は「一般廃棄物」「産業廃棄物」に大別され、さらに人の健康や環境に有害なおそれのあるものは「特別管理一般廃棄物」「特別管理産業廃棄物」として扱われます。
適切に分類できなければ、処理責任や処理基準を誤って理解してしまい、思わぬ法令違反につながるおそれがあります。
この記事では、廃棄物の分類を整理し、特に分類の際に注意が必要なポイントを紹介します。
一般廃棄物と産業廃棄物の区別
廃棄物処理法上、廃棄物は、大きく一般廃棄物と産業廃棄物に分類されます。
一般廃棄物
- 産業廃棄物以外の廃棄物(法2条2項)。
産業廃棄物
- 事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物(法2条4項1号)
- 輸入された廃棄物(法2条4項2号)
以上のとおり、一般廃棄物と産業廃棄物の区別の基準は、産業廃棄物に該当するかであり、当該廃棄物が同項に定められているかを確認することが最も重要です。
この分類によって、誰が処理責任を負うのか、どのような処理基準を満たす必要があるのかが変わってきます。
産業廃棄物の一覧
廃棄物処理法2条4項及び同法施行令2条では、具体的な産業廃棄物を定めており、この法令に該当する場合には産業廃棄物に該当します。
まとめると次のとおりです。
- 燃え殻
- 汚泥
- 廃油
- 廃酸
- 廃アルカリ
- 廃プラスチック類
- 紙くず(建設業[工作物の新築、改築、除去に伴って生じたものに限る。]、パルプ製造業、紙製造業、紙加工製品製造業、新聞業、出版業、製本業、印刷物加工業から生ずる紙くず並びにPCBが塗布又は染み込んだ紙くずに限る。)
- 木くず(建設業[工作物の新築、改築、除去に伴って生じたものに限る。]、木材製造業、木製品製造業、パルプ製造業、輸入木材卸売業及び物品賃貸業から生ずる木くず並びに貨物の流通のために使用したパレット(パレットへの貨物の積付けのために使用した梱包用の木材を含む。)及びPCBが染み込んだ木くずに限る。)
- 繊維くず(建設業[工作物の新築、改築、除去に伴って生じたものに限る。]、繊維工業(衣服その他の繊維製品製造業を除く)から生ずる木綿等の天然繊維くず並びにPCBが染み込んだ繊維くずに限る。)
- 動植物性残さ(食料品製造業、医薬品製造業、香料製造業から生ずる動物又は植物に係る固形状の不要物に限る。)
- 動物固形不要物(と畜場、食鳥処理場から生ずる獣畜、食鳥に係る固形状の不要物)
- ゴムくず
- 金属くず
- ガラスくず、コンクリートくず(工作物の新築、改築、除去に伴って生じたものを除く。)および陶磁器くず
- 鉱さい
- がれき類(工作物の新築、改築、除去に伴って生ずるコンクリート、レンガの破片等)
- 動物のふん尿(畜産農業に係るものに限る。)
- 動物の死体(畜産農業に係るものに限る。)
- ばいじん(集じん施設で集められたもの。)
- 1から19または21を処理したもので1から19に該当しないもの
- 輸入された廃棄物(航行廃棄物、携帯廃棄物を除く。)
分類上の注意
実務上、分類が迷いやすい廃棄物には次のようなものがあります。
法令を正確に読むことができれば一般廃棄物と産業廃棄物との分類ができますが、読み方に不安がある場合は弁護士など専門家に相談することをおすすめします。
事業系一般廃棄物
事業に伴い生じた廃棄物であっても、産業廃棄物の一覧にない廃棄物は一般廃棄物に分類されます。事業系一般廃棄物と言われることもあります。事業系一般廃棄物は、廃棄物処理法6条の2第6項により、事業者は許可を受けた業者に委託して処理しなければなりません。これは、産業廃棄物の排出事業者責任(法12条5項)と同様のルールです。
業種によって異なるもの
木くずや紙くずは、建設業等の特定の業種から生じるものに限り産業廃棄物に分類され、それ以外は一般廃棄物となります。
特別管理廃棄物
廃棄物のうち、人の健康や生活環境に被害を生ずるおそれがあるものは、特別管理廃棄物として区分されます。
特別管理一般廃棄物
一般廃棄物のうち、「爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある」廃棄物として、政令で定めるものが該当します(法2条3項)。
具体的には、廃家電のPCB(ポリ塩化ビフェニル)を利用する部品、廃石綿等が挙げられます(施行令1条)。
特別産業廃棄物
産業廃棄物のうち、「爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある」廃棄物として、政令で定めるものが該当します(法2条5項)。
具体的には、水銀、カドミウム、廃石綿等があります(施行令2条の4)。
まとめ
- 廃棄物は、「一般廃棄物」と「産業廃棄物」に大別され、それぞれの中で危険性の高いものは「特別管理一般廃棄物」「特別管理産業廃棄物」として扱われます。
- この分類は、処理責任者の範囲(市町村か事業者か)、処理基準の内容、許可や委託・マニフェスト制度の適用など、実務上の法的義務に直結します。
- 特に、事業に伴って生じる廃棄物については「産業廃棄物」か否かを正確に判断することが最も重要であり、条文と施行令を丁寧に確認することが求められます。
まずは、本記事で示した分類の枠組みを正しく理解しておくことが、廃棄物法務を扱う際の出発点となります。
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